日本料理を代表する寿司。季節の移ろいを表現する和食。酢飯の微妙な甘さ加減から、美味しい食材の選び方、食器の彩まで奥が深くて、その繊細さは日本文化その物ですよね。
世界的な日本食ブーム、健康志向の高まりによって美味しい寿司を握れる人材に対する需要、本物の日本食を調理できる人材に対する需要は年々増えています。
もしあなたが海外で寿司職人や和食シェフとして働きたい、と考えているなら、こんな不安はないでしょうか。
・外国語ができない。同僚やお客様とやりとりできるだろうか
・日本ではやっていけたが、海外の人は自分の実力を評価してくれるのだろうか
・給料は上がるのだろうか、下がるのだろうか
・その国の生活習慣に馴染めるだろうか
・日本の食材は手に入るのだろうか
・ビザの手配や就職先を探すのはどうしたら良いだろう
海外に出るとバラ色の世界が待っているようだけど、実際には現実は厳しいのではないか。
こんな不安や疑問が次々と湧いて来た方もいるでしょう。
こんにちは。Atsukoです。
私はシンガポールに住んで11年。海外で働きたい、という夢を持っている人をサポートしています。
今日はこれらの疑問にお答えします。
あなたの疑問がクリアになるように、インタビューも交えながら、海外に行くまでの疑問が解消されて、あなたの行く道がはっきりするように構成してありますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
<目次>
1. 寿司職人、和食シェフが海外で働くメリット・デメリット
2. 寿司職人の国別年収比較。収入は上がるの?下がるの?
3. 日本の食材は手に入るの?入らない場合はどうする?
4. 外国語ができない。どうやってお客様や同僚とやりとりしたらいいの?
5. ビザや就職先は?どうやって仕事を探すの?
6. その国の生活習慣に馴染めるのか不安。どうしたらいい?
7. まとめ
1. 寿司職人、和食シェフが海外で働くメリット・デメリット
寿司職人、和食シェフが海外で働くには主に次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
1) 日本文化の発信
2) 給料が上がる可能性がある
3) 自分のキャリアにプラスになる
1) 日本文化の発信
和食は2013年12月にユネスコの無形文化遺産に登録されました。和食は健康に良いだけでなくて、美味しくて、見た目も美しい。日本が誇るこの食文化を世界に発信する。その一翼を担う寿司職人、和食シェフが果たす役割はとても大きいし、本人も誇りを持って仕事ができます。この誇りがあなたの人生に与えるプラスは計り知れないものです。
2) 給料が上がる可能性がある
こちらは「2. 寿司職人の国別年収比較。収入は上がるの?下がるの?」でも詳しく述べますが、国によっては収入が大きく上がります。その国の物価水準が高いこと、日本人の寿司職人、和食シェフに対するプレミアムがあることなどがその背景です。その国の物価水準が高い、ということは、生活費もかかる可能性があります。
3) 自分の経歴にプラスになる
日本では得られない経験をすることによって、自分の職務範囲が広がります。そしてそれが今後のご自身仕事人生において大きな自信となります。また、海外で働いていた経験があると、転職する際に、評価されるポイントとなることでしょう。
デメリット
1) 日本の食材が手に入りにくい
2) 給料が下がる可能性もある
3) 言葉の壁がストレスになる
では、デメリットを見ていきましょう。
1) 日本の食材が手に入りにくい
外国は気候や流通制度が日本と異なるため、日本では普通に手に入る食材もなかなか手に入らない場合があります。例えばシンガポールではカブは、地元のスーパーにはおいていません。こんな場合にどう対処するかについては工夫が必要になります。詳しくは「日本の食材は手に入るの?入らない場合はどうする?」をご覧ください。
2) 給料が下がる可能性もある
メリットでは給料が上がる可能性があると言いましたが、働く国によっては給料が下がる可能性もあります。ただし、給料が下がったとしても生活費が低い場合もあります。事前によく調べましょう。
3) 言葉の壁がストレスになる
英語、もしくは現地の言葉で意思疎通を図らないといけない局面がでてきます。その時相手の言っていることがわからなかったり、自分の考えをうまく伝えられないと、それがストレスになってしまう可能性があります。完璧でなくても、相手の言葉を話すことで、コミュニケーションが円滑になる場合があります。言葉は努力次第で上手くなります。ちょっとずつスキルを伸ばしていきましょう。
2. 寿司職人の国別年収比較。収入は上がるの?下がるの?
寿司職人の年収をインターネットで調査してみました。(調査時2024年11月24日)
経験、働く国、為替レートの変動によって金額は異なりますが、日本より高い国も多いですね!やはり海外では日本人で本物の寿司が握れる人材は希少価値があって、需要と供給の関係から高く評価されているのでしょう。
寿司職人の年収比較 | 初心者 | 経験者 | 責任者レベル/高級 |
アメリカ(米ドル/年) | 30,000-45,000 | 50,000-75,000 | 75,000-120,000 |
イギリス(ポンド/年) | 25,000-45,000 | 50,000-70,000 | |
フランス、ドイツ、スペイン(ユーロ/年) | 30,000-50,000 | 60,000以上 | |
香港、シンガポール(米ドル/年) | 36,000-72,000 | 84,000-120,000 | |
タイ/インドネシア/マレーシア(米ドル/年) | 18,000-42,000 | ||
ドバイ、カタール(米ドル/年) | 36,000-96,000 | ||
オーストラリア (豪ドル/年) | 50,000-80,000 | 100,000以上 | |
日本(米ドル/年) | 17,000-27,000 | 35,000-70,000 |
やはり現実的には、給料が高い国は物価も高い国が多いです。給料が上がっても貯金を続けるためには工夫が必要です。
3. 日本の食材は手に入るの?入らない場合はどうする?
当然ですが、外国に行けば、日本の食材が手に入らない、手に入っても高い。質が悪い。このような場面に直面することでしょう。
私はシンガポールでカップラーメンの味が、同じメーカーのものであっても日本のものと違う、と聞いたことたあるので、以前食品メーカーの方に質問したことがあります。そうしたら、「それぞれの国で規制があって、特定の添加物などが使えない場合があり、代替品で対応するが、結果的に味が変わってしまうことがある」とのことでした。
「日本の食材はシンガポールでは高い。カーゴで運ぶと2−3倍。ウニは日本の10倍の価格になってしまう。」とお話しするのは、シンガポールでMiz Japanese Restauranを営む田中さん(シェフの田中さんのお母様)。
Miz Japanese Restaurantでは、シンガポールで入手しやすい魚を使うこともありますが、日本の味を大事にしているそうです。
ここはシェフの腕の見せ所です。Miz Japanese Restaurantのシェフの田中さんは、「地元で流行っている料理を取り入れてチャレンジした。椎茸明太子という料理はシンガポールでポルトベラというきのこが流行っていたことから着想した。」と言います。
このように、現地で流行っているものをアレンジして取り入れるのがポイントだそうです。
欲しいものが手に入らない場合どうするか。これは食材に限ったことではないですが、研究、試行錯誤してどうするか決めるしかないですね。またこれによって、そのお店、そのシェフの個性が出る、オリジナリティーが出る、と前向きに捉えるのが良いでしょう。
4. 外国語ができない。どうやってお客様や同僚とやりとりしたらいいの?
やはり現地の言葉や英語を勉強するしかないです。完璧にしゃべれなくてもいいのです。
仕事の合間に教室に通う、または、オンラインレッスンを受けるなどの方法があります。
最近ではDuolingoなど便利なアプリもあって、スマートフォンがあれば語学の勉強ができます。無料のものもあります。
コミュニケーションは例え片言であっても、自分が伝えたいメッセージがあれば通じるものです。伝えようとしないと言葉は上手くならないです。なので、失敗してもいいから、前に進むことをおすすめします。
海外のコミュニケーションで大事なことは、
1) 自分が言いたいことがあったら、引っ込めない。勇気を出して言ってみる。
2) 他人を批判する場合は、I message(アイメッセージ)にする。アイメッセージとは私を主語にすることです。例えば「あなたがやっていることは間違っている」ではなく、「私はこうしたら良いと思う」など。
3) 対立を恐れない。これは難しいですが、海外の人は、人にもよりますが、意外と対立することをあんまり気にしてないです。気に触ること言っちゃったかな、と思っても、結構相手は全然気にしていなかったりします。
5. どうやって仕事を探すの?ビザは?
もし寿司職人や和食シェフとして働きたいたい場合は、寿司シェフになる学校が紹介してくれる場合もありますし、エージェントがたくさんあるので、エージェントなどをあたってみると良いでしょう。
日本のエージェントのウェブサイトで海外の寿司職人、求人、などのキーワードで調べてみてください。たくさんの検索結果が出てきます。
もし行きたい国が決まっているなら、Googleで例えば ”Sushi chef hiring New York”(ニューヨークに行きたい場合)と入れて検索してみてください。求人が出てきます。興味がある仕事があれば、雇い主にメールを送るなど直接ご連絡してみてください。
ここで重要なことは、せっかくのチャンスに対してやる前から自ら拒否しないことです。
その職を受けてみると決断すれば、ここからは通常の就職活動になります。履歴書を提出し、面接を受けることになるでしょう。
雇用主との間ではっきりさせるポイント
・休み、待遇、給料など、条件を明確にしておいてください。行きの交通費は出るのか、家賃の補助はあるのかなども重要です。
・引越しの費用は出るのか
・ビザの手続きは誰がやるのか
・健康保険はあるのか(医療費がとても高い国もあります)
・所得税はどのくらいか
ビザは特に国や会社によって違います。疑問点ははっきりさせましょう。
これらのことは重要で、決断する前にはっきりさせておく必要があります。
しかし、この人は仕事より、休みの方が重要なのだ、というふうに思われないようにしてください。
雇用主が必要としているのは、仕事をきちんとやってくれる人です。
6. その国の生活習慣に馴染めるのか不安。どうしたらいい?
すでにその国にいる日本人の方がYoutubeなどで情報発信していたら、参考にしてみましょう。同僚に外国からきた人がいたらその人と連絡をとってみて、疑問点を解消しておくのも良い方法です。
でも、どんなに調べたところで、実際に行ってみないとわからないことはたくさんあります。
日本の方が良い、ということは必ず1つはあります。でも反対にこの国の方が良い、ということも必ず1つはあるのです。新しい経験に対してオープンでいてください。
オープンでいる、とはどういうことかというと、
Open: willing to listen to and think about new ideas (Oxford Advanced Lerner’s Dictionary)
つまり新しい出来事を積極的に経験する、ということです。
これこそが海外で働く醍醐味なのです。もちろん身の危険を感じるようなことは絶対にしないでくださいね。
その国の生活習慣に馴染めるかどうかは、予めわからないので、不安になるのは当然です。
できるだけ下調べをするに越したことがありませんが、あとは未知の経験を楽しむ心構えでいてください。
Miz Japanese Restaurantの田中さん(お母様)は
「日本で大きな問題だと思っていたこともこちら(シンガポール)に来れば小さな問題。日本では五体満足なのに、小さなことに心配ばかりしている。」と指摘する。
「日本の若者にはまずは外にでよう、と言いたい。いろんな国の人に会おう。
日本だけでなく、いろんなところに羽ばたいて、また戻ってきても良い。」とエールを送ってくれました。
私がもし若い頃の私にメッセージを送るとしたら、「もっといっぱい失敗した方がいい」です。たくさん経験して、失敗して色々学べばいい。私もこれまでたくさんの失敗をしてきたけれど、今こうしてなんとかなっていますよ。
7. まとめ
もしあなたが、寿司や日本料理でもてなすことに興味があって、国際的に活躍したい、自分の腕を世界で試したい、外国の人に日本料理の素晴らしさを知ってもらいたい、と考えているなら、メリット、デメリットを参考にしながら、決断して行動することをおすすめします。
プロ野球に例えると、大リーグを目指す選手、日本国内で活躍する選手、両方いますよね。どちらが良い、悪いの問題でなありません。
海外で働くことが唯一の選択肢ではありません。じっくり考えた結果、日本にとどまるのが最適解、ということだってあります。
最初の問いに戻ります。
寿司職人、和食シェフが海外で働く現実は厳しいのか?
もちろん厳しい現実に直面することもあるでしょう。でも、あなたが自分のやっていることに誇りを持って、自分の経験、経歴を豊かにし、さらに自分を成長させることが重要だと考えるなら、前向きにお考えになってみてはいかがでしょうか。
海外で寿司職人、和食シェフをするというのは、素晴らしい日本文化を世界に発信する大変意義のある仕事です。
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